鬢付け油について 〇鬢付け油の歴史や作り方鬢付け油は、原料のモクロウとヒマシ油などを火にかけて溶かし、型に流して固めた固形練り状のオイルです。円柱状に固めたものや固まった後に石鹸形にカットしたもの、容器に流し込んで固めたものなどあります。 固形状にした油は、江戸時代の初期には「伽羅の油(きゃらのあぶら)」と呼ばれるものが髭や髪を整えるのに使われていました。次第に広く使われるようになり、鬢付け油として現在に残っています。鬢付け油の「鬢」とは日本髪の左右の張り出し部分のことです。乱れやすい鬢の部分を整えるために付ける油ということが鬢付け油の名前の由来と言われ、鬢付け油の広まりとともに日本髪も発展しました。 現代では鬢付け油は、力士や舞妓や芸妓、歌舞伎などの伝統芸能の世界で髪を結い上げて固めるために使われたり、かつらに使われたりしています。 〇鬢付け油の種類 固形状で硬い鬢付け油ですが、その中でも硬さによって種類分けされています。具体的には、ハード系、ソフト系、それらの中間、の3種類に使い分けられます。最も硬いハード系を鬢付け油と呼んだり、かた煉りと呼んだりします。中間のものは中煉り、ソフト系はすき油と呼ばれます。すき油の「すき」は髪を「梳く」からきており、何度も櫛を入れられる柔らかさがあります。 〇力士が髷(まげ)を結うのに使う鬢付け油 お相撲さんが髷を結うのに使う鬢付け油は、すき油に香料を加えたものです。「お相撲さんの匂い」とよく言われるバニラ系の甘い香りは、このすき油に使われる香料によるものです。鬢付け油の中では、何度も櫛を入れられる最もソフトなタイプとは言え硬さがあるため、手のひらの中央に適量をのせ、両掌を合わせ体温で柔らかくし練って使われます。 〇整髪以外で使う鬢付け油 一言で鬢付け油と言っても、様々な種類があり、髪だけでなく肌に使われるものもあります。伝統芸能において白塗りと呼ばれるお化粧をする際に、白粉を塗る前の下地として使われるものもあります。 |
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コスメコンシェルジュからひと言 鬢付け油は、日本生まれのポマードとも言えるのではないでしょうか?お相撲さんが使うすき油を作っているのは、現在(2020年5月)では、東京都内で一カ所だけのようです(東京都江戸川区にある島田商店、商品名「オーミすき油」)。お相撲さんとすれ違うと、甘いとてもいい香りがしますよね。実際、その香りによって関心を寄せる人も少なくないようです。遅れ毛をおさえたり、香りを楽しんだりなど一般の人にも愛用者がいます。もとはお相撲さんの髷を結うものであり、頭髪用の化粧品という点は忘れないようにしましょう。 鬢付け油には無香料のものもありますし、硬さもまちまちで、白粉の下地に使うものは下地油とも呼ばれます。舞妓さん体験のお化粧で鬢付け油の下地も体験できます。 鬢付け油の原料として欠かせないのがモクロウ(木蝋)です。モクロウの配合比率によって鬢付け油の硬さが決まり、モクロウの配合率が高いほど鬢付け油は硬くなります。モクロウはハゼの実のから得られ、現在も和ろうそくの原料ですし、昔から鬢付け油だけでなく、様々な製品の原料として使われています。Japan Wax や Vegetable Waxとして大変高級で良質な原料として知られています。 しかし、安価なパラフィンへの移行やハゼの実の採取の難しさなどから、生産者も生産量も大きく減少し、このままではモクロウは大変危機的状態です。日本を代表する原料として何とか持ちこたえてほしい、生産者と利用者双方にいい形で今後も使われていくことを願っています。 参考:cocon ウェブマガジン「おすもうさん」 おすもうさんの甘い香りのもと「鬢つけ油」を作る職人親子・島田商店~その①(2017年12月1日) |
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おすもうさんの甘い香りのもと「鬢つけ油」を作る職人親子・島田商店~その②(2017年12月8日)
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